「プロ・スポーツ選手の新しいキャリアの体現」

栗原徹さん(1期生):NTTコミュニケーションズ ラグビー部 シャイニングアークス プロ・スポーツ選手の新しいキャリアの体現 ~研究を通して得た知見がプレーや仕事にもたらす効果とは~   健康マネジメント研究科(以下、健マネ)に入学しようと思ったきっかけは? サントリーでプレーしている頃から、ラグビーの現役を引退した後、どうすればよいのだろうという問題意識を持っていました。ラグビー選手がプロとして活躍できるのは30歳から長くても35歳くらいまでです。このプロ選手である期間に、生涯賃金を稼ぎきれるものではありません。現役選手としてのキャリアが終わった後、何か別の形でゼロから再スタートするのではなく、これまでの経験をベースに、キャリアをステップアップできるようにしておく必要があると思ったのです。プロになった1年目に英語を勉強したりしていて、専門学校やビジネススクールなどへの進学も考えていました。ちょうどその頃、2005年に母校の慶應で健康マネジメント研究科が開設されることを知りました。   実際に入学してみてどうでしたか? これまでラグビー一辺倒であったため、大学院ではいわゆる「キャンパスライフ」を満喫できました(笑)。ラグビーの世界だけでは出会えなかったような人に、いろいろな刺激を受けました。 入学前には、ラグビーをもっとメジャーにしたいという思いを持っていたのですが、そのためには一度ラグビーから離れて考えてみることも必要なのではないかとも思っていました。スポーツに限らず、さまざまな視点からの講義や、インターンシップなども用意されていて、その環境として最適でした。 健マネの先生方は、学びたいという意思が学生にあれば、しっかりと受け入れてくれます。実際に、アグレッシブにお願いをして先生方と話し合う時間を作り、修士論文と研究を進めました。サントリーの練習場が府中であったため、佐野先生のご配慮で、修士論文の相談を成城にあるデニーズでいつもやっていたのが、良い思い出となっています。 大学院に来て自分が劇的に変わったというイメージはどちらかというとありません。それよりも、研究や仲間との議論を通して、一つひとつ地道に積み重ねていくことが大切だと学びました。卒業後に各方面で活躍する同期、学年を越えた知り合いとのつながりなどのネットワークを得ることができるのが、大きな魅力のひとつです。   修士論文を通して研究したことは? 修士論文のテーマは、「日本におけるラグビーチームのプロ選手の役割について―サントリーサンゴリアスを例に―」です。企業スポーツの問題点が凝縮されているラグビーをメジャーにしたいという思いがあったので、インターンシップでは、鹿島アントラーズにお世話になり、アントラーズが行う普及活動や選手育成について研究しました。 また、選手を引退しても、スポーツのフィールドでなにかをしたいという思いがありました。 研究テーマを絞る前には、「企業」と「スポーツ」と「地域」の連携という大きなテーマを考えていました。ただ、論文のテーマを決める段階では、佐野先生から「足元を見て自分にも何かができるテーマを研究する」ということを教えていただきました。絵に描いた餅ではなく、実践を重んじる研究をするというのが、慶應の大学院で取り組むべきことなのだと思いました。   若いスポーツ選手と、健マネの後輩へのメッセージをお願いします 中学生や高校生のスポーツ選手に言いたいのは、勉強も両立しておいたほうがよいということです。私は数学が好きなのですが、ラグビーのプレーや試合運びについても、数学の論理的な考え方が活きることがあります。また逆に、大学院での講義で分かりにくいところがあったら、ラグビーに置き換えて考えたりもしました。つまり、勉強をきちんとしておくことによって、論理的に整理できたりして、自分のプレーにもバリエーションがでると思うのです。 院生には、ぜひ貪欲に研究テーマに取り組んでもらいたいと思います。先生方には“アグレッシブ”に相談する。そして、長期的な夢を持つことは大事ですが、自分にできる身近なところからまず研究していき、それを積み重ねていく。また、せっかく健マネにはさまざまなバックグラウンドの人が集まっているので、同期や先輩、後輩の異なる視点から色々と吟味してもらうことも大事です。   ps0401PROFILE – 栗原徹さん(スポーツマネジメント専修1期生:2007年3月修了) NTTコミュニケーションズ ラグビー部 シャイニングアークス 幼稚園、小学校ではサッカーをプレーしていたが、進学した中学校にサッカー部がなく、部活動でのラグビーを始める。1997年に慶應義塾大学に進学。ラグビー選手として学生代表にも選ばれキャプテンを務めるなど活躍。創部100周年を迎えたシーズンには、15年ぶりの関東対抗戦グループ優勝、14年ぶりの大学日本一へと導く。大学を卒業後、2001年からサントリーサンゴリアスでプレーし、2003年にはワールドカップにも出場。2005年に慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科に入学。2007年の大学院修了まで、ラグビー選手と大学院生を両立する。2008年6月からは、NTTコミュニケーションズ「シャイニングアークス」に入団し現在に至る。日曜日以外は毎日練習する生活。   取材: 田川洋平(医療マネジメント専修1期生) 松尾素一(スポーツマネジメント専修 3期生) 山本恵梨子(スポーツマネジメント専修 4期生)

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