「研究を実践に活かす-保健師として母子保健に携わりながら」

赤坂憲子さん(2期生):茅ヶ崎市役所健康づくり課 健康マネジメント研究科(以下、健マネ)に入学しようと思ったきっかけは? 看護学生の指導に従事していた際に、自分自身の教育能力、研究能力に疑問を感じるようになりました。またかつて大学院を中断した経験から、体系的にきちんと学びなおしたいと思っていたことから、入学を決めました。   健マネでの2年間を振り返ると? あっという間の2年間でした。常に締め切りに追われていたような感じでしたが、多くの仲間に支えられ、楽しい 時間を過ごすことができました。バックグラウンドの異なる友人や、同じ看護学専修の仲間とディスカッションしながら、さまざまな課題に取り組みました。特に論文作成にあたり、同じ基礎看護領域の仲間には公私ともに大変お世話になりました。また研究論文は中堅看護師の職業と育児の両立に関する研究をしました。中堅看護師とは、一般的には3年から5年の経験年数がある看護師のことを指しますが、看護理論家のベナーは経験年数ではなく、実践能力のレベルの一つとして定義しています。中堅看護師は組織の中で看護実践の中心的立場ですが、結婚、妊娠、出産などのライフイベントが重なることが多い時期です。そのため職業と家庭の両立が難しく、退職に至ることが少なくありません。私も自分の問題として非常に関心があり、仕事と子育てを実際に両立されている方を対象に、職業を継続する構造について質的研究をしました。研究に関しては、基礎看護分野の三上教授、老年看護学分野の太田教授にご指導いただきました。特に三上先生には、手とり足とり、一からご指導いただき、カテゴリーの名前をつける時には、フィットするネーミングを何時間も一緒に考えてくださいました。厳しくも温かいご指導に大変感謝しています。その知見を現在、自分自身でも実践しています。   現在、取り組んでいることは? ps0502 茅ヶ崎市役所健康づくり課で母子保健を担当しています。1歳6か月児健康診査、2歳児歯と育児の相談、健診のフォローアップ教室、などが担当業務です。健診では、問診、計測、診察、指導、の一連の流れがスムーズにいくように全体を見て調整します。地区担当制をとっているため、自分の担当地区で問題が発生したときは、家庭訪問が必要です。最近は育児不安のケースや他機関からの連絡ケースなども増えてきており、そのような問題となる事例への対応では関係諸機関との連携が重要です。病院や児童相談所、保健所主任児童委員や民生委員などの関係機関とケース会議を持ちながら処遇を検討し、市町村の保健師としての役割を果たせるように活動しています。また発達の遅れが心配される事例への対応や、さまざまなご家庭の事情に合わせて、知識やネットワークを駆使して対応を工夫することにも、保健師としてのやりがいと難しさを感じています。   今後の目標は? 自分の研究テーマであった、子育てをしながら職業を継続することに関連して、自分自身もその大変さと日々向き合っています。さまざまなお子さんやご家族と日々接し、また自己研鑽をつみながら保健師としてキャリアアップし、市の医療保健に関する施策にかかわっていけたらと思っています。   PROFILE 赤坂憲子さん(看護学専修2期生:2008年3月修了) 茅ヶ崎市役所 健康づくり課 山形大学医学部看護学科卒業後、横浜市立大学医学部付属浦舟病院(現、市民総合医療センター)に看護師として勤務。その後、山形大学大学院医学系研究科看護学専攻入学も、事情により中退。その後、川崎市立看護短期大学非常勤助手、同短期大学成人領域助手を3年間行い、看護学生の指導にあたる。その後、学生指導に際し、教育研究能力の向上を目的に、慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科に入学。看護学専修基礎看護学分野に在籍し、看護師の職業と育児の両立に関する研究を行った。現在は茅ヶ崎市役所健康づくり課に保健師として勤務し、母子保健を担当している。   取材: 吉岡かおり(看護学専修2期生) 小田島久美(看護学専修4期生)

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